大分市の幼稚園・敷戸ふない幼稚園
サイトマップ
個人情報の保護方針
大分市の幼稚園・敷戸ふない幼稚園へのお問合せは097-569-2831までお気軽に。

園長のご挨拶


学校はグライダー人間の訓練所である。飛行機人間はつくらない。
グライダーと飛行機は似ている。空を飛ぶのも同じ (中略)…
ただ悲しいかな、グライダーは自力で飛ぶことができない。
(外山 滋比古 「思考の整理学」より)


私のこどもの一番好きな姿は、何かに夢中になって取り組んでいる姿です。上手にできなくて構いません。むしろ上手にできなくてどこかぎこちなく、決して格好良いとはいえない姿に心惹かれてしまいます。

「何かができるようになる過程」には、必ずできるようになるために努力する時期、練習する長い長い時期があります。特にやりはじめの時期は誰だって嫌なものです。じょうずにできない自分の姿は見たくないし、見せたくない、劣等感を感じたくないのです。

見ている大人の側も、こどものできない姿を見ると「ああっもうっ、こうすればいいのに」なんてもどかしい気持ちになって思わず手を差し伸べたくなってしまいます。大人もわが子の“できない姿”はできれば見たくない…というのが本音ではないでしょうか。

こどもは我々大人の目にとても敏感です。自分ができない姿を見せたときの大人の反応・できたときの大人の反応の違いを本当によく覚えています。こうしてだんだんこどもたちは、できそうにないことへの挑戦をやめ、簡単にできそうなことばかりに挑戦したくなる、繊細でまじめな子ほど「できなかったら どうしよう」と思い消極的になってしまうのです。

本当に大切なことは、「いまできたこと」以上に「できるようになるために努力した過程」にあるのではないでしょうか。何かができるようになるためには、できない時期、練習する時期があるのが当たり前で、むしろ練習なくしてできることは例外です。世の中では練習せずにできることを天才と称してもてはやす傾向があり、それが泥臭く努力をする過程を「カッコ悪い」と見ることにつながっているように思います。

泥臭く努力をしている姿は、その子が新しいことができるようになる兆候なのです。「まわりのおともだちはできるようになった」「じょうずにできなくてカッコ悪い」「努力してもできないかもしれない」そんな不安・葛藤の中で、無心に懸命に頑張っている。その姿は凛としてたくましく、子どもの成長と可能性を感じずにはいられません。

ふない幼稚園では、子どもが子供らしく不器用に、そして夢中になって何かに取り組み努力する姿を、そのままに認め、高く評価し、励ましてあげたいと思います。倉掛紀美代先生指導の体育教室では、毎年4月の頃には、とび箱がとべない子がたくさんいますが、それが10月の運動会で保護者の方に披露する頃には、ぼぼ全員の子がとべるようになり、台上前転をおこなうまで上達していきます。これはこどもたちが自由遊びの時間に、何カ月もの間、とんではお尻をつき、とんではお尻をつき…を何度も何度もくり返してきた成果です。これに自信をつけたこどもたちは「次は、竹馬」「次は、マラソン」「次はなわとび」…と次々と新しいことに挑戦し、努力する楽しさを学んでいます。

小学校へ上がると、どうしてもカリキュラムの履行という関係上、「できるようになるまでじっくり取り組む」だけの十分な時間的な余裕がなくなります。幼稚園でも過度に行事や保育内容を広げすぎると子どもたちが自由にとりくむ時間がどんどん削られていきます。幼児期にはひとつひとつのことにじっくりと時間をかけて、できるようになるまで取り組む経験を重ね、「自分はやればできるんだ」ということを身体で経験し、“本物の自信”を身につけてほしいと思います。

グライダー人間から飛行機人間へ…
努力の過程に垣間見えるこどもたちの成長は、先生への依存から脱却、つまり先生がいなくてもがんばれる強い心(自立心)であり、それは「人生で最初の学校」である幼稚園で、「一番最初に学んでほしいこと」です。

敷戸ふない幼稚園 園長 田中 俊

このページの最上部へ戻る